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2008年度作品。日本映画。
鈴子は短大を卒業して就職もできずに、しかたなくアルバイト生活を送っているどこにでも女の子。どうにかしてこの生活を変えようと考えている中、ひょんなことから事件に巻き込まれてしまう。「百万円貯まったら、この家を出て行きます」と家族に宣言し、百万を貯めるたびに次から次へと引越しをして、1人で生きていく決意をする。
監督は「赤い文化住宅の初子」のタナダユキ。
出演は「ニライカナイからの手紙」以来の主演となる蒼井優。「世界の中心で愛をさけぶ」の森山未來 ら。
この映画を語る上で、蒼井優の魅力を抜きにすることはできない。好きな女優なので、ひいき目もあるかもしれないが、彼女の存在感とナチュラルな演技はとにかく光り輝いており、映画に独自の色合いを添えていたと思う。
たとえば彼女が「好きです」と語るときのこもった感じや緊張感、話がすれちがったりしたときのあいまいな表情、ポツリとこぼす本音などは印象深く、胸にすっと馴染むものがある。こういう場面を見ていると、彼女は本当にいい女優だ、と思う。
蒼井優の演技もあって、主人公の鈴子の魅力も充分に引き出されている。
基本的に鈴子は不器用なのだろう。だがその不器用さもきわめて自然体に見える。たとえば人との距離感がうまく測れない気まずい雰囲気や、「自分から逃げている」と語る感覚は自分にも身に覚えがあるだけに共感性を抱くことができる。
そんな鈴子というキャラは、映画を通して少しだけ成長をする。
弟のエピソードや、好きになった男性との出会いでもって説得力よく撮られているのがわかり、非常に好印象だ。特に弟から勇気をもらったと語るあたりは個人的には好きである。
ただ本音を言うと、森山未來演じる(いままで森山未來はどうでもいい俳優だと思っていたが、今回見てその考えを改めた。非常にいい演技をしている)彼と鈴子の関係がちょっと残念でならなかった。
告白のシーンの甘酸っぱさに大変共感を覚えただけに、ベタなラストであった方が個人的にはうれしかったのだが、まあそれが鈴子の、あるいは監督の選択ならそれも仕方ないだろう。
基本的に地味な作品ではあるが、個人的にはなかなかの良作だと思う。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
出演者の関連作品感想:
・蒼井優出演作
「男たちの大和/YAMATO」
「クワイエットルームにようこそ」
「虹の女神 Rainbow Song」
「ハチミツとクローバー」
「フラガール」
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